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西澤伊智朗のホームページ

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杜に在るもの

初茸を握りつぶして笑ふ子よ

初茸の無傷にでるやら袂から





 俳人小林一茶の句である。山の恵みである初茸を題材にした句をみつけた。一茶は家族と炊き込みご飯にして食べたのだろう​か。塩を振って網焼きにしたのだろうか。子供の手にちょうど握れるくらいの大きさ。ハツタケはカサやヒダなどが傷つくと青緑​色に変色する。山から持ち帰る間に俺の中でこすれ合わないよう持ち帰る。

 あまりの変化に驚いて自然の持つ呪術的な力や長敬の念さえ感じた。

一茶の生活の背景から詠まれた句が、現代に生きる私の感性に触れ、日常の出来事と合わさって細分化され、徐々に消化されて、​土によって「杜の記憶」が表現される。琴線に触れた感情が伝播していく。

あのガレが「わが根源は、森の奥にあり」といって森の奥に潜む生命の力を作品に込め、自然に対する恐れや祈りを時代や場所を超えて伝え​たように、私もいつか「杜に在る」ものを伝えたい。





(夕暮れの食物連鎖 2020) 65x50x60 cm 2020年




 夕暮れの食物連鎖

 強い日差しや人々の営みの喧騒と静寂と深い闇の中に飲み込まれる時の狭間、​日の沈むほんのわずかな時間帯。そのわずかな時の中に物事の本質が見えること​がある。五感を研ぎすまし感じた

ことを制作に生かすようにしてきた。

現代に生きる私たちにとってはほとんど気に止めず夕日に染まる西の空が徐々に​暮れていく。夕日が落ちていく物静かな空気感を感じることもなく日々を過ごし​ていることがい。

 普段ほうりっぱなしにしている菜園の後始末をしたときのこと、遅ればせなが​ら夏野菜のツルや茎、育ちすぎたキュウリやかぼちゃなどを片付けた。あのみず​みずしかった夏野菜とは別に、旬を過ぎ取り残された野菜たちは、虫たちの力も​借りながらすでに自然に戻ろうとしている。穴の開いた野菜の間からコオロギが​顔を出す。

 それぞれの関わりの中で育ち、死に、朽ていく。そして新たな生命を吹​き込む。そんな姿に深く感じ入った夕暮れだった。




炎昼の静寂 23 × 65 × 50 × 55 2023年

冬虫夏草のすすめⅣ 33 × 33 × 45 2021年

静寂と喧騒のはざまに

 少年のころ野山を駆け巡っていると奇妙なキノコと出会った。冬虫夏草という昆虫​の幼虫に寄生したキノコである。昆虫とキノコ、この二つの命が微妙な関係で成り立​ち、やがて虫の命を引き継いでキノコが成長していく造形に気持ちの高鳴りを覚え​た。はえている姿は、一つの形の中で生と死がストレートに表されていて心をひかれ​た。どんな物事にも生と死、善と悪、愛と憎しみなど相反するものが混沌として存在​している。

 本当に何が正しいのか、何を肩じたらいいのか、どう生きたらいいのか、自分自身​に判断を委ねられることがある。強い日差しと人々の喧騒が去り、静寂と深い闇の中​に飲み込まれる時の狭間、漆黒の闇が訪れるわずかな時間帯。そのわずかな時の中に​執事の本質がみられることがある。五感を研ぎ澄まし、制作に励みたい。





静寂と喧騒の狭間に19 − 4 C 53 × 53 × 80㎝ 2019年

静寂と喧騒の間で1-A 45 × 35 × 35cm 2019年


土一声の住まう処(志賀高原ロマン美術館/長野2012年



内在する触感(志賀高原ロマン美術館/長野) 2016年


自然を創る ヤマザキマザック美術館/名古屋 2022年

Daily life at Ichiro Kiln

杜に在る21-1 38x20x48cm 2021

 穴が空いていると、人の性としてのぞき込むじゃないです​か(笑)。穴の開き方によっていろんな見え方があって、人​によってそれぞれに感じ方が違うと思うんだけど、開口部へ​の表現って、とってもそそられるっていうか。普通の器をつ​くっていても、開口部、やきものでいえば口とか縁とかの部​分って、みなさん勝負しているところだと思うんだけれど​も、わたしの作品も、やきもの、粘土の特性として、内側、​外側だけじゃなくて内側も見せてあげたいな。それで勝負し​たいなというふうに感じます。


プロフィール

西澤 伊智朗

NISHIZAWA ICHEROU

1959年 長野県長野市生まれ。

2000年 長野市七二会に築窯

コンペディション

第45回朝日陶芸展 秀作賞

第25回日本陶芸展 賞候補

第74回新匠工芸会 新匠賞

第76回新匠工芸会 奨励賞

朝日陶芸展・長三賞現代陶芸展ビエンナーレ・

益子陶芸展・国際陶磁器展美濃・日本陶芸展・

菊池ビエンナーレ展・陶美展等入選



個展

2017年 静寂の囁き

西澤伊智朗作陶展 (長浜アートセンター/滋賀)

2012年 カンブリアのカンブリアたる理由

  西澤伊智朗作陶展 (黒壁美術館/滋賀

2010年 カンブリアのカンブリアたる理由

  西澤伊智朗作陶展 (つくば美術館/茨城)


グループ展

2022年 自然を創る (ヤマザキマザック美術館/名古屋)

2016年 内在する触感 (志賀高原ロマン美術館/長野)

2015年 東海・甲信越のうつわ展 (伊丹市立工芸センター/兵庫)

2012年 土-声の住まう処 (志賀高原ロマン美術館/長野) 

2009年 田上真也×西澤伊智朗二人展 (GALLERY数寄/愛知)



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メール

nisiiche1234@gmail.com

住所

〒381-3164 長野県長野市七二会 乙4339-3

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